はじめに
アコースティックギターの音作りって、奥が深いじゃないですか。エレキみたいに「ハムバッカーかシングルコイルか」みたいなシンプルな話じゃなくて、ピックアップ一つ取っても種類がいろいろあって、しかも生音の良さをどう拾うかって哲学が絡んでくる。
特にライブでアコギを使うギタリストにとっては、「録音だと最高の音が、ステージでは全然鳴らない」「ハウリングで PA さんに白い目で見られる」みたいなあるあるが、もうマジで永遠の課題。
今回の動画は、その答えのひとつをぶっちゃけ全部見せた回です。使ってるギターは YAMAHA の LLX16。これに3種類のピックアップを搭載・追加して、さらに外部のコンデンサーマイクも立てて、合計 4 つの音源を比較。そこから外部マイクを外して、3 つのピックアップだけでライブに耐える音をどう作るか、まで順を追って実演した回です。
書き起こし+実機の解説+自分なりの本音、混ぜながら整理します。長くなるので、急いでる人は「3 PU ミックスの核」のセクションだけ読めば結論は掴めます。
検証セットアップ ── 4 つの音源を並べる

比較する音源は、こう並べます。
外部マイクは Audix SCX25A、これは「自然な生音のリファレンス」として置く役。次にギターに搭載・追加した3種類のピックアップ。LLX16 に内蔵されている YAMAHA System 60(コンタクト・ピエゾ)がベース音色担当、マグネット系の Takamine Tri-Ax2 がハウリング対策役、最後に後付けの内部コンデンサーマイク L.R. Baggs Lyric が輪郭・カリッと感を足す担当。
要するに、リファレンス1個+ベース1個+保険1個+スパイス1個、の4音源で組み立ててます。
外部マイクをリファレンスに置いた理由はシンプルで、コンデンサーマイクで 12 フレットあたりを 30cm くらい離して狙うのが、いま手元の機材で出せる「いちばん自然な録音音」だから。これがある意味のゴール、と捉えてもらうと比較しやすい。
ただこの音、ライブでは出せないんですよね。マイクスタンド立てても、PA から戻ってくる音をマイクが拾ってフィードバックループになる、つまりハウリング祭り。ステージでは別の手段が必要、その「別の手段」を組み立てるのが今回の本題です。
ピックアップ① YAMAHA System 60(コンタクト・ピエゾ)

LLX16 に最初から搭載されてる、ボディに貼り付けるタイプのピエゾです。
実際に弾いてみると、音はけっこうウォーム。ピエゾって聞くと「カリカリ」「シャキシャキ」のイメージ持つ人多いと思うんですけど、System 60 は意外と低域に温かみがある。これ大事なポイント。
そしてコンタクト・ピエゾの真骨頂が、ボディヒッティングの音をしっかり拾うこと。指で弦を弾きながら、親指の付け根や手のひらで響板(おもて板)を叩いてリズムを出す奏法、いわゆるパーカッシブ系をやる人にとっては、もうこれ一個で世界が変わります。マグネットだと弦の振動しか拾わないから、ボディ叩いてもほぼ無音。コンタクト・ピエゾはボディ全体の振動を拾うから、奏法そのものが鳴る。
俺がフィンガースタイル中心の演奏をする上で、System 60 は「ベース音」としてのポジションが固定。これ抜きにライブの音は組めない。
ピックアップ② Takamine Tri-Ax2(マグネット)

サウンドホールに後付けする、いわゆるマグネット・ピックアップ。原理はエレキギターのハムバッカーやシングルコイルと同じで、弦の振動を磁石とコイルで電気信号に変換するやつ。
正直に言うと、これ単体の音は「アコギ感」が薄いです。エレキっぽい音になる、というかエレキそのもの。だから「アコギの自然な響きを録音する」用途には向かない。
ただ、ライブでの強さは別格。マグネット・ピックアップは弦の振動しか拾わないので、外部の音(PA からの戻り、隣のドラムの音、ベースアンプの音)に超強い。つまり、ハウリングしにくい。
具体的には、コンタクト・ピエゾや内部マイクをメインにすると、ステージのモニターから返ってくる自分の音やバンドの音がそのまま PU に入って、特定の周波数でループが起きる。これがハウリング。マグネットはその影響をほぼ受けないので、ハウリング対策の保険として超優秀。
あとこの機種、ボタン押すと「あとこれくらい電池ありますよ」ってバッテリー残量を教えてくれる機能がある。これが地味にめちゃくちゃ気が利いてて、ライブ前に「あれ、電池まだ大丈夫だっけ」みたいな不安がない。エンジニアリングの愛を感じる。
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ピックアップ③ L.R. Baggs Lyric(内部コンデンサー・マイク)

サウンドホールの内側に貼り付けるタイプのコンデンサーマイク。後付けで自分でセットアップしました。
セッティングは、かなりカリカリ寄り。「耳をつんざくような」って言うとちょっと盛りすぎだけど、そういう方向に振ってる。理由は明確で、これ単体で完成された音を作る用途じゃなくて、他の PU と混ぜたときに「輪郭」を加えるためのスパイス。
単体で聞くと攻撃的に感じる音でも、ベースとなるウォームな音に乗せると、ちょうどいい角が立つ。料理で言えば、優しい出汁ベースの汁物に、ほんのちょっと黒胡椒を振るような関係。胡椒だけ食ったら辛いだけだけど、出汁の上にあるとうまみが立つ、あの感じ。
俺の中では、Lyric は単体で完結させない、混ぜることが前提のピックアップって位置付けです。
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3 PU ミックスの核 ── ここが活用術の本丸

ここからが今回の本題。外部マイクを外して、3 つの PU だけでライブに耐える音を作る。
俺がやってる組み立て方はこう。
Step 1:System 60(ベース)
まずコンタクト・ピエゾの System 60 を音作りのベースに置く。理由は前述、ウォームな音とボディヒットの両立。フィンガースタイルでパーカッシブ要素入れる人なら、これ以外の選択肢が思い浮かばない。
Step 2:Lyric(輪郭)
System 60 だけだと、ちょっと低域に寄りすぎて音の芯が弱い。聞き手にとっての「メロディが立つ感じ」が薄い。そこで Lyric の音をほんのちょっとだけ足す。
ポイントは「ほんのちょっと」。Lyric を上げすぎると、せっかくのウォームさが死ぬ。俺の感覚値だと、System 60 を 10 とすると Lyric は 1〜2 くらい。マジでスパイス感覚。
Step 3:Tri-Ax2(ハウリング保険)
ここまでで音は完成。あとはライブハウスごとのハウリング対応。会場の構造、PA の挙動、その日のモニター音量、こういうのでハウリングが出る周波数って毎回変わるんですよね。
で、ハウリングが出始めたら、Tri-Ax2 の音量を上げる。マグネットはハウリングに強いから、System 60 と Lyric の比率を維持したまま、Tri-Ax2 で全体音量を底上げできる。これで PA さんに迷惑かけずにステージで戦える。
3 PU を「混ぜる」って言うと、なんか感覚的・芸術的に聞こえるけど、実態はけっこう論理的。ベース・輪郭・保険、それぞれ役割が明確。
余談ですが、ライブで使う場合の音の組み立て方はもう一段深い話があって、TAG3C を使ったルーパー+ディレイの活用については過去の記事 「指の動きはシンプル、音は派手 — TAG3Cの『魔法』を解く」 でまとめてます。アコギの音作りに興味ある人は併せてどうぞ。
なぜ「混ぜる」が「神」なのか
タイトルに「神」って入れたの、ちょっと盛ってる感あるけど、本気で書いた言葉です。理由を3つ。
1. 単一 PU では届かない領域に行ける
System 60 単体では低域に寄って音の芯が弱い。Lyric 単体ではカリカリすぎる。Tri-Ax2 単体ではアコギ感が薄い。それぞれ単体だと「これだ」って音にならない。
でも混ぜると、それぞれの弱点を補い合って、結果的に「録音音に近いけどライブで使える音」っていう、単独の PU では物理的に到達できない領域に行ける。これは足し算じゃなくて、相互補完の話。
2. 環境変化に対応できる
ライブハウスごとにコンディション違う、って書いたけど、これがマジで大きい。同じ「最高の音」でも、ハコによって出方が全然違う。
3 PU 構成だと、その日その日で比率を微調整できる。乾いたハコでは Lyric を少し上げて潤いを足す。湿ったハコでは System 60 のローを削る。ハウリング危険度高そうな現場では Tri-Ax2 の比率を最初から上げる。これができる柔軟性が、現場対応力の差になる。
3. 音作りが「思想」になる
これがいちばん言いたかったこと。1 PU で済ませると、音作りは「機材選び」で終わる。でも 3 PU 混ぜる構成にした瞬間、「自分にとっての理想の音とは何か」「その音を構成する要素は何か」を分解する作業が始まる。
ベースは何か、輪郭は何か、保険は何か。これ自分の音楽観を言語化してるのとほぼ同じです。「混ぜる」は技術じゃなくて、自分の音を定義する作業。だから神。盛ってない。
おわりに
長くなりましたが、伝えたかったのはひとつ。アコギの音作りに「正解の機材」は存在しない、けど「正解の組み立て方」はある、って話です。
俺の答えは「3 つ混ぜる」。System 60 をベース、Lyric を輪郭、Tri-Ax2 を保険。これでライブに出ても録音に近いニュアンスが出せて、ハウリングにも対応できる。
ここまで読んでくれた人、ぶっちゃけマジで奇跡的だと思います。ありがとうございます。同じくアコギで音作りに悩んでる人に、何か一個でも持ち帰れるヒントがあったら嬉しいです。
動画はこちら:https://youtu.be/iqFFY6be8gU
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それでは、また次の記事で。
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